《日本古典への招待》 『奥の細道』講師 東京大学名誉教授 長島弘明
『奥の細道』は、芭蕉(1644~94)のもっとも著名な俳諧紀行であると同時に、日本古典文学の代表作でもあります。芭蕉は元禄2(1689)年の旧暦3月27日、門人の曾良を連れて、江戸深川からみちのくの俳諧行脚に出発しました。8月下旬に大垣に着くまで、約5か月、関東・東北・北陸と、2400キロに及ぶ大旅行です。様々な歌枕や歴史上の旧跡をめぐり、大勢の人と出会い、沢山の名句を残しています。 『奥の細道』はこの旅をもとにした紀行ですが、事実そのままの記録ではありません。旅で体験した事実を素材としながら、それに虚構を加えた創作なのです。そういう視点で、『奥の細道』をご一緒に読んで行きたいと思います。
《日本古典への招待》『万葉集』講師 東京大学名誉教授 多田一臣
『万葉集』は、現存するわが国最古の歌集で、二〇巻からなり、約四五〇〇首ほどの和歌が収められ、いまから一三〇〇年ほど前に作られたとされます。 『万葉集』には、奈良時代の宮廷文化を背景とする世界が展開されています。当時の宮廷文化は、私たちが想像する以上に高度な洗練を見せており、また時として猥雑さを帯びていたりもします。言い換えるなら、実に多様なありかたをうかがうことができます。 この講座では、まずは『万葉集』の概要についてお話をし、その上で、時代の流れに沿いつつ、主要な歌人の作に焦点を当ててみたいと思っております。この講座を御視聴いただくことで、『万葉集』の世界の全容を理解していただけるはずです。
《日本古典への招待》『源氏物語』 講師 フェリス女学院大学名誉教授 三田村雅子
『源氏物語』は西暦1001年の疫病流行期に新婚間もない夫を喪った未亡人紫式部によって、その虚脱感の中に書かれたと言われています。疫病の最中に書き起こされ、病に脅かされながら書き継がれた作品である『源氏物語』は常に死を前提に置く物語となりました。喪失感の文学です。 死を媒介にした時、愛はどのように維持できるのか。身代わりを求めてしまう心理、満たされない思いなど、死と病と老いという暗い要素とせめぎ合うように生きることの意味、愛の究極が輝きだす瞬間を『源氏物語』の中から12回にわたって読んでいきます。そのことで、源氏物語という大長編のもっとも本質的な部分を理解することができるでしょう。
《日本古典への招待》『平家物語』 講師 千葉大学名誉教授 栃木孝惟
本講座は、日本の代表的な古典、『平家物語』を読み深めることを目指す講座です。古典を読み深める過去への旅は、古典をより豊かなものにすることを目指すと共に、過去から現代を豊かにするすぐれて創造的な営みでもあります。日本の重要な転換期を描き出すこの物語が、私たちの父祖・母祖が歩いてきた道筋を、また政争が武力によって決する過酷な時代の人々のありようを、どのように映し出しているか、その一端を見つめます。